ビタミンDを「サプリ」と呼ぶのをやめよう|それは免疫・脳・老化を制御する環境応答ホルモンである

はじめに:なぜ今さらビタミンDなのか

ビタミンDは、安価で、安全性が高く、効果範囲が極めて広い。
それにもかかわらず、医療の現場でも一般社会でも、いまだに「骨のビタミン」「日光不足の補助栄養素」程度の理解に留まっています。
私はこの認識自体が、現代人の慢性炎症・自律神経失調・免疫破綻・脳老化を見逃してきた構造的原因の一つだと考えています。
ビタミンDは栄養素ではありません。
それは環境(太陽光)に反応して産生され、全身の遺伝子発現を調節するステロイドホルモンです。
定義:ビタミンDとは何か(何ではないか)

ビタミンD3(コレカルシフェロール)は、皮膚で紫外線(UVB)を受けて合成され肝臓で 25(OH)D になり、腎臓および免疫細胞・脳・血管内皮などで 活性型(1,25(OH)₂D) に変換されます
重要なのは、この活性化が腎臓専属ではないという点です。
免疫細胞、脳神経細胞、血管内皮、筋肉細胞はそれぞれ局所でビタミンDを活性化し、自分自身の機能を調節しています。
つまりビタミンDは、「必要な場所で、必要なだけ、免疫と炎症を制御するための内分泌因子」です。
構造:なぜ効果が多岐にわたって見えるのか

以下の作用が整理されています 。
- 骨・カルシウム代謝
- 免疫力増強
- 感染症・がん・自己免疫疾患予防
- 動脈硬化・心血管疾患予防
- 糖尿病予防
- うつ・SAD(季節性情動障害)予防
- 認知症予防
- 筋力低下予防
- 死亡率低下・アンチエイジング
これを「万能」「怪しい」と感じる人は、生理学的な階層構造を見ていません。
ビタミンDが制御しているのは、
- 自然免疫と獲得免疫のバランス
- 炎症性サイトカインの暴走抑制
- ミトコンドリア機能
- 神経栄養因子(BDNFなど)
- 血管内皮の恒常性
つまり、老化と病気の共通上流です。
上流を抑えれば、下流(疾患名)は複数同時に改善する。それだけの話です。
臨床的意味①:免疫とは「強さ」ではなく「制御」

COVID-19の話題は、当時の時代背景として資料に多く含まれていますが、ここでは一点だけに絞ります。
重症化の本質は「感染」ではなく免疫暴走(サイトカインストーム)でした。
ビタミンDは、ウイルス排除に必要な自然免疫は維持し過剰な炎症反応だけを抑えるという、極めて都合の良い調整役を担います。
これはCOVID-19に限らず、
- インフルエンザ
- 上気道感染
- 自己免疫疾患
- 慢性炎症性疾患
すべてに共通する免疫生理です 。
臨床的意味②:脳・自律神経・メンタルとの関係

ビタミンD受容体は、前頭前野・海馬・扁桃体に豊富です。
つまり、
- 情動制御
- ストレス耐性
- 概日リズム
- 自律神経の切り替え
に直接関与しています。
SAD(冬季うつ)が「日照不足」で起こるのは比喩ではありません。
太陽光 → ビタミンD → 神経炎症抑制 → 気分安定という、極めて物理的な連鎖です。
精神論でも、性格の問題でもありません。

誤解の訂正①:「日本人は足りている」は誤り

資料中のデータでは、日本人の平均血中25(OH)D濃度は約24〜25 ng/mL 。
これは、
- 骨代謝の最低ラインは満たす
- 免疫・脳・抗炎症には不足
という、最も問題のあるゾーンです。
至適濃度は40〜60 ng/mL。ここに達している人は、都市部ではほぼ存在しません。
誤解の訂正②:日光だけでは無理

- 紫外線回避
- 屋内生活
- 高緯度
- 高齢
- 肥満(脂肪組織に隔離される)
これらを考慮すると、食事・日光だけで至適濃度に到達するのは非現実的です。
実装への示唆:どう考え、どう使うか

量の話を雑にすると炎上しますが、事実だけ述べます。
- 2000 IU/日:最低限
- 4000–5000 IU/日:多くの成人で現実的
- 目的は「摂取量」ではなく「血中25(OH)D」
これは自己判断の話ではありません。
検査し、調整し、再評価する。それが医学です。
結論:ビタミンDは「異常が出る前」を見るための指標である

ビタミンDは、病名が付いた後に使う指標ではありません。
- 感染からの回復
- 炎症の収まり方
- 神経系の持ちこたえ方
こうした「異常になる一歩手前」を評価するための指標です。
私がビタミンDを重視する理由は単純です。
この領域は、ほとんど測られてこなかったからです。
老化、免疫低下、慢性炎症、脳機能低下。
これらを別々の問題として扱う限り、見逃され続けるものがあります。
ビタミンDは、それらが同じ生理の延長線上にあることを示してくれます。


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