
アミノ酸「5-ALA」とミトコンドリアの対話|細胞の内なる循環が、エネルギーと若さを生み出す
「アミノ酸」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
タンパク質を構成する「20種類のアミノ酸」が思い浮かぶかもしれません。
しかし、5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、そのどれとも違う――「タンパク質をつくらないアミノ酸」なのです。
では、この変わり者のアミノ酸が、なぜ今これほど注目されているのでしょうか?
5-ALAは「エネルギーの素材」になるアミノ酸
私たちの体内では、5-ALAがごく少量ながら毎日合成されています。
この5-ALAは、やがて「ヘム」という物質に変化します。
このヘムは、酸素を運ぶヘモグロビンや、植物の緑をつくるクロロフィルの材料でもあり、
同時に、細胞のエネルギーを生み出す「ミトコンドリア」の中で、極めて重要な役割を果たしています。
つまり
5-ALAは、体の中で燃えるエネルギーのきっかけを生み出す火種のような存在なのです。
ミトコンドリアで生まれ、ミトコンドリアに戻るアミノ酸
興味深いのは、5-ALAの「生まれ方と使われ方」です。
5-ALAは、私たちの細胞の中にあるミトコンドリア自身がつくり出します。
そして、その後ふたたびミトコンドリアに戻り、エネルギー代謝に使われていくのです。
これは、細胞の中で完結する小さな「循環」。
私たちが意識することなく、体の奥で絶えず繰り返されている営みです。
ミトコンドリアは「自分で自分を養う」小さな生命体
ミトコンドリアは、まるで自分自身で自立しているかのように、必要な成分を自分でつくり、それを使ってエネルギーを生み出します。
実際、ミトコンドリアには独自のDNAを持っており、「母親からだけ受け継がれる遺伝子」として知られています。
この「自律的な細胞内器官」が元気であれば、全身が元気になる。
逆に、ミトコンドリアが疲れていると、どんなに栄養を摂っても力にならない。
このことが、長寿や美、そして生きる力の根源と深く関わっているのです。
50年の研究が語る、5-ALAの価値
長崎大学の北潔(きたきよし)教授は、5-ALAとミトコンドリアの研究を半世紀近くにわたって続けてこられました。
「なぜ人は老いるのか?」
「どうすれば、病気ではないけれど不調な状態から脱せるのか?」
その問いに対して、医学だけでなく生命の進化や細胞の振る舞いからアプローチしてきた姿勢は、まさに命の設計図を見直すような取り組みと言えるでしょう。
「老化」も「元気」も、細胞内で始まっている
私たちは、つい「肌」「疲れ」「体力」など表に見える変化に注目しがちですが、
その前に必ず、細胞レベルでのエネルギー循環の変化が起きています。
- 5-ALAが不足すると、ヘムが足りなくなる
- ヘムが足りないと、ミトコンドリアが回らない
- ミトコンドリアが回らないと、ATP(エネルギー)が作れない
- エネルギーが不足すれば、全身が「なんとなく不調」になる
- だからこそ今、エネルギーの根源に働きかける医療が求められているのです。
体は「見えない小宇宙」からできている
5-ALAは、体の奥深くでエネルギーの循環を支える静かな設計者のような存在です。
誰にも見えない、でも確実に命を動かしている。
その神秘に気づいたとき、
私たちはただ若返るだけではなく、本来の自分を取り戻す旅に出られるのかもしれません。
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